「SMOKE 」第四話(最終話)

  • 2018.12.15 Saturday
  • 14:44

 

 

何日も何日も船は航海をつづけ、徐々に懐かしい寒さが近づいてきました。

その間も夜になるとスモークはミシャの事ばかりを考えていました。

 

ある日目が覚めると船は北極の氷の中を走っていました。

そして船を止めていよいよ北極の地に辿り着きました。

 

スモークは嬉しくて大声で叫びながら船の上から氷の上に飛び降りました。

 

「ヒャホー!帰ってきたんだ。船長さん、教授さん、ありがとうね」

 

 スモークはそう言って、真っ白な氷の上を駆け出しました。

 

「あれ、今なんか声がしなかったかい」

 

 船を氷河にくくりつけていた水夫が、仲間の水夫に声をかけました。

仲間の水夫も何か煙の固まりのような物が走っていくのを見たような気がしましたが、

スモークの体は小さな竜巻に隠れてもう見えなくなっていました。

 

「あれ!スモーク、スモークじゃないか!」

 

 真っ白な氷の上を走ってくるスモークを見つけて、雪雲のお父さんのは叫びました。

二つの煙の固まりは互いに走り寄って、小さなスモークの方が

大きな煙の固まり(ちょうどお腹の部分)に飛び込み、

今度は上の方から飛び出しました。

 

「お父さん、ただいま!ぼくね、旅に出てたんだよ!」

 

「スモーク!お前ってやつは、父さんや母さんをすごく心配させて、

サンタさんに聞いても何も知らないって言うし。でも、帰ってきたんだな、よかった。

さあ、こっちにおいで、一体連絡もしないで今までどこにいたんだ、こんなに長い間!」

 

 お父さんは、スモークの耳をつかんで嬉しそうに、でも怖い顔を見せて言いました。

 

「それよりも、父さん大変なんだ!助けてほしい人達がいるんだよ。

だから、僕、大好きな友達にも最後の挨拶もしないで

本当に急いで帰ってきたんだから。

急がないとみんな食べ物がなくなっちゃって…」

 

 スモークはミシャや困っている両親のことを急に思い出して

声をあげて泣き出してしまいました。

お父さんは、スモークを氷河の上に立たせると、顔を近づけて言いました。

 

「スモーク泣くな、何があったのか話してみなさい。

助けて欲しい人達って誰の事だい?」

 

 スモークは、今まであった事や見た事をお父さんに話して聞かせました。

すべて聞き終わると、お父さんはしばらく黙って考えていましたが、

最後には大きくうなずいてスモークに言いました。

 

「よし、上手くいくか分からないけど、

お前が信じた人達のために何とかやってみよう」

 そう言うと、スモークを抱き寄せました。

 

 

 その年、日照りが続いて雨がまったく降らなかったその地方で、

気象学上信じられない事が起きました。

真夏の一年で一番暑い時期のある日、朝になって人々が目が覚めドアを開けたら、

外になんと雪が降っていたのです。

それも、ここの地方で冬になったら降る牡丹雪ではなくて、

見た事ないようなサラサラの氷のような雪でした。

 

多くの人達が夢を見ているのだと思ってもう一度ベットの中に戻ったと言います。

でもしばらくしてもう一度目が覚めて窓の外にまだ雪が降っているのを見て、

それが夢ではない事が分かると、

人々はひざまずいて思いつく限りの称賛の言葉で神への祈りを捧げたのでした。

 

雪はすぐに融けて水になり、渇いた大地を潤し、

土地はすぐに元のように作物が作れるような状態に戻りました。

そして秋に収穫が出来る野菜の植え付けに間に合って、

その年の秋は例年のように作物が収穫できたのです。

 

雪のおかげでミシャの家も麦や野菜が育って、何とか一家は助かりました。

そして前よりいっそう信心深くなり、

また明るい会話が交わされるようになりました。

 

でも、何故かミシャだけは、いつも沈んだ顔をしていました。

お父さんやお母さんも心配して何があったのか聞こうとしましたが、

ミシャはただ首を横に振るばかり。

 

ミシャは、あの日学校から帰ってきてスモークからの手紙を見つけてから、

ずっと悲しい気持ちが心の中を去りませんでした。

 

“スモークはなんで急にいなくなったんだ”“黙って行ってしまうなんてひどいよ!”

 

ミシャはあれから何度も夜中に起きて暖炉の中から煙突をのぞきこみました。

 

「スモーク・・・いないの?」

 

でもスモークは降りてくる事はなく、

しかたなく一人だけでスモークがまるでいるかのようにして遊ぶのでした。

 

その年のクリスマス。ミシャの家では貧しいながらもご馳走がならんで、

皆で楽しくクリスマスを祝いました。

今年の嬉しい出来事と言えば、何といっても真夏に雪が降ったことです。

あの雪によってこの地方一帯は日照りや旱魃から救われたのです。

 

お父さんの掛け声で、皆で神様にもう一度感謝の言葉をささげました。

 

「ミシャのこの年の一番の出来事はなんだった?」

 

 お父さんの言葉にミシャはおもわずこう答えました。

 

「スモークと遊んだ…」

 

「スモークってどのお友達?」

 

 お母さんが不思議そうに聞くと、ミシャは急いで口をつぐみ、

いつもの寂しげな表情に戻りました。

そんなミシャを心配そうにお父さんとお母さんは見つめました。

 

 その夜、ミシャはスモークの夢を見ました。

ミシャとスモークは、真っ白な雪の上で思いっきりぶつかりっこしています。

ミシャがぶつかっていくとスモークはミシャの体を思いっきり上に放り上げて、

下でミシャを受け止めます。

スモークの体はふわふわで暖かくて、

どんなに強く叩いたり押したりしてもすぐに優しくはじき返されます。

でもスモークにはちゃんと腕も手もあるので、ミシャをつかんで押し倒す事も出来ます。

二人は何度もぶつかって、疲れるとお互いの手を枕に昼寝を始めました…。

 

 次の朝、目が覚ましたミシャは、昨日の夜に枕元にぶら下げておいた

大きな靴下の中に何か入っているのを見つけました。

そして、すぐにベットから飛び起きて枕元の靴下を解いて、

中の物を取り出してみて、思わず声を上げました。

 

 靴下の中には二つのプレゼントが入っていました。

一つはミシャが学校で今年から使うようになる色鉛筆のセットと持ち運びが出来る画用紙帳。

そしてもう一つはフワフワの羽毛のような毛で作られた人形で、

胸のところに大きく『スモーク』と刺繍がされていました。

 

そして、そのスモークそっくりな人形は小さな手紙を持っていました。

広げてみるとそこには、何度も練習したきちんとした字でこう書かれていました。

 

  ミシャへ

 

 ぼくたちはずっといっしょだからね

 

       スモーク

 

 

ミシャは、何度も何度もその人形を抱きしめて、キスをしました。

そしてその日から、ミシャの枕元には、お父さんたちが

プレゼントした覚えのない人形がミシャと寄り添うように寝るようになりました。

お父さんたちが

「誰にもらったの?」と聞くと、

ミシャは心のそこから嬉しそうにこう答えるのでした。

 

「スモークからだよ!」

 

 そう言ってほおずりした人形は、

嬉しそうにミシャに笑いかけているようでした。

 そしてその後二人はずっとずっと一緒に過ごしました。

 

 

 あなたのまわりにも、スモークはいるかな?

 

 

          end

 

 

 

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