「SMOKE 」第一話

  • 2018.12.02 Sunday
  • 16:18

スモークは今日も煙突の中で夢を見ていました。

 

煙突の上から少しだけ四角い空の光が入ってきて、

それがスモークをますます周りから浮き上がらせて見せています。

スモークは今日も生まれた北極の空を

自由に飛んでいたことを思い出しているのでした。

 

北極で生まれた煙の妖精スモークが、

何故こんなところに住んでいるのかというと、

そもそもあの有名なおじさんの勘違いが原因でした。

 

あのおじさんというのは、煙突と北極の人といえば…

そうサンタクロースのおじさんです。

 

サンタクロースは去年のクリスマスに、

たまたま工房で遊んで隠れていた煙の妖精のスモークを

ほかのおもちゃと一緒に袋に詰めこんで

そのままソリに乗って出発したのです。 

そしてこの家の煙突を急いで降りる途中に半分開いていた袋から

スモークを落としてそのまま先に行ってしまったのでした。

 

長い間袋の中でおもちゃと一緒にいたスモークは、

煙突の中の懐かしい煙の匂いに安心してそのまま眠ってしまって、

気がついたときにはもうサンタクロースは遠い国の空を飛んでいたのです。

スモークは来年またサンタクロースがこの煙突を通る時まで、

ここで待っていなければならなくなったのでした。

 

でも、スモークは時間が経つうちにこの家と

この家の煙突がとても気に入り始めました。

 

煙突は毎週きちんと掃除されていてクモの巣もないし、

何よりここに住んでいる家族が暖炉の前で話すことは、いつも暖かい話ばかりで、

スモークは毎晩彼らの話を聞くのを楽しみにしていました。

家に住むのは貧しい百姓の夫婦と小学生になったばかりの息子でした。

 

夫婦は朝早くから夕方遅くまで、牛を使って土を耕したり、

作物を植えたり忙しく働き、

息子の方も、両親に負けないようにとまじめに勉強をして、

夜にはもらった教科書をたどたどしく二人に読んで聞かせるのでした。

 

煙突に住み始めてしばらくしたある晩、

皆が寝静まったのを確かめてから、

スモークは初めて家の中を覗いてみました。

 

四角い暖炉の中から見えたのは、テーブルと椅子と木の戸棚、

床の隅に小麦粉と野菜の入った袋が2つあるだけの質素な部屋です。

スモークは誰もいないのをよく確かめると

暖炉から部屋の中へ入ってみました。

奥の部屋からは家族の寝息が聞こえてきます。

スモークは安心して、久しぶりに背中をうんと反らせて伸びをしてみました。

 

 ウーン・・・

「君だれ?」

 

 突然言われて振り返るとパジャマを着た息子が立っていました。

 スモークは初めて人間の子供を見たので驚いて言葉が出ませんでした。

でもこの子のことはいつも知っています。

だから出来るだけ落ち着いて返事をしました。

 

「あの・・ぼくは スモーク」

 

スモークは心の中でこう考えました。

『この子はぼくとおないくらいかな?』。

 

息子の方もトイレに行こうと思ったら、

暖炉の前で煙が動いていて、その煙が自分に話しかけてきたので、

まだ夢を見ているのかと思いました。

でも、さっきその声は自分と同じくらいの子供の声、

それも優しく親しみやすそうです。

 

二人ともしばらくお互いを見合った後、

『できたら仲良しになりたいな』

と心の中で同じように考えました。

 

「君は?」

「ぼくの名前はミシャ」

二人はお互いの顔を見て笑いました。

 

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