「SMOKE 」第三話

  • 2018.12.10 Monday
  • 11:52

JUGEMテーマ:児童文学

 

 

 

「あっ」

 

スモークはまぶしさに声を上げて目をふさぎました。

 

もう半年以上も外に出ていなかったのです。

それからゆっくりと目が光に慣れるのを待ってから、久しぶりの昼間の世界を見ました。

 

そこにはカラカラに乾いてひび割れ、所々に痩せた草が生えている畑、

並んで立っている木も枯れて今にも倒れそうなくらい弱っています。

 

スモークは「早くしないと」と言い聞かせ、人が来ないのを確かめると、

町の方へと急いで向かって転がりはじめました。

町まで行く途中に大風で飛ばされそうになったり犬に追いかけられたり、

そのたびにミシャのことを思い出してふんばりました。

 

そしてたまたま通りかかった馬車の後ろにつかまって、

そのまま町の中にまで運んでもらいました。

 

初めて見る人の住む町。変な帽子をかぶった男や、

大きなスカートをはいた女性が忙しそうに歩き回っていて、

鉄の大きな箱が車輪で動いています。スモークは驚いて立ち尽くしていました。

それでも馬車から離れて町の中を転がっていると、

前から女性が歩いて来た女性が突然大声をあげました。

 

「きゃー煙よ、火事だわ!」

 

「えっ、違います」

 

 スモークの声にその女性はますます金切声をあげました。

 

「煙がしゃべったあ!」

 

 スモークは慌てて逃げ出しました。

でも道を走ると、皆が目をまん丸にして同じように叫び声をあげます。

 

「わー、煙がこっちにもやってきた!はやく火を消せ」

 

「消防車をよべ」

 

 馬は驚いて反対側に走り、

突然止まった車に後ろの車が追突して町の通りは大騒ぎ。

 

 困ったスモークが通りをあちこちと走っているとさっきの鉄の箱が

後ろから煙を出しながら横切っていきます。

 

「そうだ!」

 

 スモークは箱の後ろに飛び乗りました。

すると、煙でスモークの体が隠れて、

皆からはすこし煙が多い車にしか見えなくなりました。

 

「やっと火事が消えたようだ」

 町の人たちは、安心しましたが、

車の運転手だけは後ろを見ながら頭をひねりました。

 

「あれ、エンジンの調子がおかしいのかな?煙がいつもよりでているぞ」

 運転手は点検をしたいと思いましたが、

今日は大事なお客さんを乗せているので黙ったまま走り続けました。

車はスモークを後ろに乗せたまま町を過ぎていきました。

 

 着いたのは船が沢山とまっている大きな港でした。

そして車に乗っていた大事なお客と言うのは、

これから北極探検に出かける大学の教授だったのでした。

 大きなめがねをかけた教授は車を降りると、

早速手にもっていた探検用の双眼鏡を、あちこちに向けて言いました。

 

「北極行きの船はどれかね?」

 

 すぐに助手が答えます。

「あの、『さざなみ号』と書いてある中型の船です」

 

 長い間車の後ろにつかまっていてとても疲れたスモークは、

車が止まると横になって休んでいましたが、

二人の会話を聞いて喜んで飛び上がりました。

 

「あれ、エンジンを止めても煙が出ている!おかしいぞ」

 

 スモークを見て運転手があわてて駆けつけてきたので、

スモークは歩き出した教授の後ろに急いでついて行きました。

 でも、ありがたい事に教授は大のタバコ好き。

いつもパイプの煙をもくもく吐き出しています。

スモークが後ろを歩くと、

教授のパイプの煙がいつもより多めに漂っているように見えます。

 

「教授、このタバコは煙が少し多いようですが」

 後ろを歩く助手が、手でスモークをはたきながら咳き込んでそう言うと、

教授は首をひねりながら謝りました。

 

「あれ?おかしいな、すまん、すまん、

最近タバコの銘柄を変えたんだよ。でもこんなに煙が出るとは…」   

 

 船に乗り込む時、船長さんはモクモクと動いている煙を見て

「発火物禁止!」

 

と大声で注意しようとしましたが、その前を行く教授がパイプを吸ってるのを見て、

前を通る時に大きな咳払いを数回するだけにしました。

 

「ん、ゴホ、ゴホ!」

 

「あっ、ごめんなさい。煙が多めのタバコのようで…」

 

 教授は後ろについてくる煙を見ながら、

『変だなあ』と思いながらも申し訳なさそうに頭を下げて船に乗り込みました。

 

 一緒に船に乗り込んだスモークは心の中で教授に向かって

“ありがとう”と言って頭を下げて、

誰にも見つからないように煙突の上に登りました。

煙突からは黒い煙がいつでも出ているので、

ここなら何があっても見つかる事はありません!

 

スモークは安心して煙突の中で休みながら、ミシャのことを考えました。

 

“今頃手紙を見つけて読んでいるのかな”

 

“今日は一人で、マッチ棒倒しをするのかな”

 

“ぼくのこと怒っていないといいな”

 

 

 でもしばらくすると、懐かしい北極のことを思い出し始めました。

 

“もうすぐ皆に会えるんだ!皆びっくりするだろうな。

だってずっと長い旅にでていたんだから。

喜んでくれるかな、しかられても、でもいいかな。

またおかあさんと一緒にお風呂に入って、その前にお父さんに…”

 

スモークはそのまま眠りに着きました。

 


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